
「うちの会社のiPhone、実は1つのAppleIDを使い回してるんですけど、大丈夫でしょうか…」
そんな声をよく耳にします。
たとえば、company@icloud.comを社内で共有し、パスワードもみんなが把握している状態だと、退職者や紛失時のトラブルに対応しきれないかもしれません。
本記事では、企業が1つのAppleIDを使うリスクと、安全に管理するための管理対象AppleID(Managed Apple ID)への切り替えについて、わかりやすく解説します。
最後まで読めば、ビジネスを守るデバイス管理のポイントがしっかりつかめるはずです。

この記事を読むメリット
- 1つのAppleIDを使い回すことで起こりうる具体的リスクを学べる
- 管理対象AppleID(Managed Apple ID)と個人用AppleIDの違いを理解できる
- 企業向けの運用切り替え手順や費用対効果を知り、不安を解消できる
- セキュリティと業務効率の両立を実現するためのポイントを把握できる
悩み「共通アカウントでiPhoneを使っているけど…」

「会社支給のiPhoneを使うとき、みんなでひとつのiCloudアカウントを共有しているんです。
パスワードは知っているから、退職者がいてもIT担当者が変更すればいいって言われるけど、いつもバタバタするし不安です。」
実はこうしたケースは珍しくなく、現場からするといざ退職者が出たときや、紛失したときの責任所在があいまいになりがちです。
誰がパスワードを変えたのか把握できないまま、端末がロックされて使えなくなることもあり得ます。

個人用AppleIDがビジネス用途に向いていない理由
「AppleIDって個人向けでしょ? それを会社全体で使うって大丈夫なんでしょうか?」
ここが大事なポイントです。
そもそも個人用AppleIDは、1人がプライベートで使うよう設計されています。
- パスワードは本人のみが自由に変更可能
- 写真やアプリ購入履歴など、プライベートデータが混在しやすい
- アクティベーションロックが個人単位で強くかかる
このため、会社で複数台のiPhoneを管理しようとすると、退職や紛失・盗難時の手続きがとても煩雑になります。
しかも、元社員がパスワードを勝手に変更してしまうと、IT担当や総務部門が端末を再利用できなくなるリスクも。

管理対象AppleID(Managed Apple ID)とは
「そういう不安があるなら、Appleが提供しているManaged Apple IDを使うべきですよ。
会社側がアカウントを発行・削除・パスワードリセットできるので、退職者や紛失時の対応もスムーズです。
社員個人が勝手に変更できないため、情報が一元管理されます。」
Managed Apple IDは、Apple Business Managerという管理ツールを通じて作成する企業専用のAppleIDです。
個人用の設計とは異なり、組織的な運用を想定しているため、ビジネスでの運用に向いています。
個人用AppleIDとManaged Apple IDの主な違い

- パスワード管理
- 個人用AppleID: 本人が自由に変更可。会社が把握できなくなる危険性。
- Managed Apple ID: 企業が管理する仕組みで、退職者が勝手に変更する余地がない。
- アプリ配布と端末設定
- 個人用AppleID: 端末ごとに手動で設定やインストールが必要。数が増えると作業量が膨大に。
- Managed Apple ID: Apple Business ManagerとMDMが連携し、アプリや設定を一括配布。
- アクティベーションロック解除
- 個人用AppleID: パスワードがわからないと解除できない。紛失時に再利用不能になりやすい。
- Managed Apple ID: 会社がロック解除操作を行えるため、退職者が消えても問題なく端末を再利用できる。
- データとプライバシー
- 個人用AppleID: 個人の写真やプライベートデータが混在する可能性。
- Managed Apple ID: 原則として業務用データのみを扱うため、プライバシーリスクが低い。
Apple Business ManagerとMDMのメリット

「Managed Apple IDを導入するには、Apple Business Managerっていうのが必要なんでしょう?」
とツウが疑問を口にすると、ショウが答えます。
「そうですね。Apple Business Manager(ABM)で会社所有のデバイスを登録し、各端末が会社の管理下に入るように設定します。
さらにMDMを組み合わせることで、アプリ配布やセキュリティ設定、紛失時の遠隔ロックなどを集中管理できるんです。」
- MDM(Mobile Device Management)
- OS・アプリのアップデートを自動で配布
- 遠隔初期化や端末ロックなどのセキュリティ対策を一元的に実行
- 部署や役職ごとにカスタム設定を適用し、現場の使い勝手を高める
事例「共通アカウントからManaged Apple IDへ切り替えた企業の話」

ある小規模事務所では、company@icloud.comというアカウントを6人で使い回していました。
あるとき、社員の1人が急に退職。
IT担当がすぐにパスワードを変えようとしたら、元社員が先にパスワードを変更しており、端末のアクティベーションロックを解除できなくなったのです。
結局、Appleのサポートに連絡して、書類を提出して…と大変な作業になりました。
その後、Managed Apple IDに切り替えてみたところ、退職者用のアカウントはIT担当が速やかに削除でき、端末はすぐに次の社員へ再配備できたそうです。
「最初は設定が面倒だと思ったけど、結果として大きなトラブルを防げるので、もっと早く導入しておけばよかった」と担当者は話しています。
共有アカウントをやめるメリットと費用対効果

- セキュリティリスクの大幅低減
退職者や紛失端末のリスクが激減し、情報漏えいの可能性を抑えられる。 - 管理コストの削減
一見、ABMとMDMの導入コストが高く感じられるが、トラブル対応や紛失端末の損失を考えると中長期的にはコスト圧縮につながる。 - 業務効率の向上
アプリ配布や端末設定を一括で行うため、IT担当者の負担が大きく減る。
現場の社員もアップデートや設定に悩まされる時間が少なくなり、本業に集中しやすい。
具体的な乗り換えステップ

- Apple Business Manager登録
企業情報を登録し、管理者アカウントを取得。 - Managed Apple ID発行
社員全員分を作成し、ロールや権限を設定。退職者や異動対応がスムーズに。 - MDMサービス契約
ABMと連携可能なMDMを選び、遠隔管理機能を有効化。 - 新規端末から段階的に移行
すでに多数の端末がある場合は、新規導入分からManaged Apple ID運用を始め、徐々に既存端末も移していく。 - 運用ルールの徹底
社員には「会社支給端末には個人用AppleIDを使わない」などの社内ポリシーを周知しておく。
まとめ

1つのAppleIDを使い回し、パスワードを共有している運用は、短期的にはラクかもしれません。
しかし、退職者が先にパスワードを変えたり、紛失端末でアクティベーションロックが解除できなくなったりと、想定外のトラブルが頻発する恐れがあります。
個人用AppleIDはあくまで“個人の利用”が前提。会社が管理しきれる設計ではありません。
そこで、Managed Apple IDを導入すれば、パスワードやロック解除を会社が一括管理できるほか、アプリ配布やセキュリティも強化できます。
Apple Business ManagerとMDMを組み合わせることで、セキュリティと効率が格段に向上。
業務の安定と社員の安心感を同時に手に入れるためにも、早めの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)

Q1: 共有アカウントでもパスワード管理を厳重にすれば問題ないのでは?
A1: 厳重にしても、退職者や紛失時の対応は難しく、トラブルの原因になりやすいです。
Q2: Managed Apple ID導入コストが心配です。
A2: 確かに初期費用やMDM費用がかかりますが、トラブル対応や紛失端末の損失を考えると、長期的には費用対効果が高いケースが多いです。
Q3: 既に大量の端末があります。切り替えは面倒そう…
A3: 新規端末からManaged Apple IDをスタートし、徐々に既存端末に移行する方法が一般的です。計画的に進めれば、スムーズに導入できます。
Q4: 個人用AppleIDで買ったアプリはどうなる?
A4: 会社運用ではVolume Purchase Programなどを通じてライセンスを一括管理するほうが安全でわかりやすいです。必要に応じて切り替えを検討しましょう。
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